まど・みちおさんの詩をひらくと、目が、耳が、おおよろこびします。
「ああ、ここでふたたび会えたんだ」と。
まどさんが書く、生きものたちと、生きものでないものたちの、わらい声や話し声、そしてうたに、目も耳も、生まれるまえから出会っていたのでしょう。
時間のなかを足早に通りすぎながら、ほんとうは見えていたのに、聞こえていたのに、そのうた声に気づくのがこわいようで。
通りすぎたことさえ忘れようとしていただけなのです。
そんなわたしにも、まどさんは、やさしく教えてくれます。
もう、思い出してもいいんですよ、と。
りんごの におい
りん りん
ゆきの におい
はなの におい
りんごの ことば
りん りん
かぜに ひかる
ゆびに ひかる
この地上にやってくるまえに、星や花や風といっしょに、なんども歌ったはずの、なつかしいうたを、たくさん。