積雪
目を とじると
水音が ちかづくそれは わたしの 部屋をつつむ
ゆきが とけ
鳥たちが 羽ばたく声
けれど 目を あけてしまえば
水音は やむ窓も 森も つまさきも
いつまでも 凍ったまま
水鳥の翼のしたで うまれるはずの蕾も
とおくを 見るために
とおくへ ゆくために目を もらったはずなのに
ふかく とじているときだけ
たましいは ゆきのうえをすべり
鳥の羽ばたきとともに
あそべるのだから
もうなにも
ふかく 見ることはないと決めてしまえば
わたしは
いつまでも うまれない蕾ほどの
からだの かるさを ふたたびもてるのだろうか
ほんとうは
はるの のはらの ばらの らしんばんをもっていたことも
南へ とびたつ鳥のうたを うたえたことも
わすれてめざめる 朝だけが
このまちのうえに
音もなく ふりつもってゆく
※詩誌「交野が原」86号に掲載。