2022年3月6日日曜日

なつかしいうた

  まど・みちおさんの詩をひらくと、目が、耳が、おおよろこびします。

「ああ、ここでふたたび会えたんだ」と。

まどさんが書く、生きものたちと、生きものでないものたちの、わらい声や話し声、そしてうたに、目も耳も、生まれるまえから出会っていたのでしょう。

時間のなかを足早に通りすぎながら、ほんとうは見えていたのに、聞こえていたのに、そのうた声に気づくのがこわいようで。

通りすぎたことさえ忘れようとしていただけなのです。

そんなわたしにも、まどさんは、やさしく教えてくれます。

もう、思い出してもいいんですよ、と。


りんごの におい

りん りん

 ゆきの におい

 はなの におい


りんごの ことば

りん りん

かぜに ひかる

ゆびに ひかる

 

この地上にやってくるまえに、星や花や風といっしょに、なんども歌ったはずの、なつかしいうたを、たくさん。