2020年11月27日金曜日

「現代詩手帖」12月号「現代詩年鑑2021」

毎年11月末発売の「現代詩手帖」12月号には、その年の詩書や詩人たちの活動について振り返る特集「現代詩年鑑」が掲載されます。

今年の「現代詩年鑑2021」に、もっとも惹かれた詩集のひとつである、高貝弘也さんの『紙背の子』(思潮社)の書評を寄稿しました。

詩を書くことは、自らの魂(み)を文字のうえにくり返し刻んでゆく行為なのだと。静かな、けれど芯には凍るような熱情を宿した言葉が、そっと教えてくれる一冊。

限られた文字数のなかでこの詩集の、汲みつくせない魅力をどう伝えるか…悩みました。

けれど、おそらく詩人はこの「紙背の子」というかけがえのない存在についてこう捉えているのでは…と思いながら書きました。

高貝さんの渾身の一冊の魅力が、少しでも伝われば幸いです。



そして、この「現代詩年鑑」のアンソロジー「2020年代表詩選」にも、詩を一篇、載せていただいています。

今年8月、真夏に発行した個人誌「glass」から、「真珠」という作品を。

小さな詩誌にも関わらず、「2020年展望」や「今年度の収穫」のアンケートでも、敬愛する詩人の方々がここに収載した諸篇について触れてくださり…ほんとうにありがたい限りです。

それぞれのコメントをとてもうれしく拝読しました。

刊行時にいただいたご感想も、一つひとつ大切にしています。

お読みいただいた方々に、心からの感謝を。 

来年も、あまり焦らずに、詩を求めてゆきたいと思います。



 

2020年11月3日火曜日

立原道造の詩についてのエッセイを寄稿しました

「四季派学会会報」2020年冬号に、「私の好きな四季派の詩」というテーマで、立原道造の詩にまつわるエッセイを寄稿しました(会員ではなくゲストとして)。

ここ2年間のバックナンバーを覗くと、朝吹亮二さん、野村喜和夫さん、中本道代さん、阿部日奈子さん、大木潤子さんなどが、それぞれのお好きな詩をめぐるエッセイや詩を寄稿されています。

今号では、松本邦吉さんが詩を書かれています。

夏と冬に開催される、四季派学会の大会にてこの会報は配布されているようです。

今回は、立原道造のソネット、「はじめてのものに」(『萱草に寄す』)から連想を広げ、彼の詩の語彙の特徴と魅力について書きました。

このエッセイを書き始める前に、道造の詩や書簡集を読み返していたのですが、建築物を設計する、造りあげる、という意識がソネット作品のなかに強く感じられたのと同時に、書簡のなかの詩を語る肉声に改めて心惹かれました。

全集の一巻分に及ぶものすごい量の手紙。そこには、書簡の相手に話しかけることを通して、詩に向かう自身を見つめる眼差しの熱さがあります。

今回のエッセイでは書簡については触れていませんが、また機会があれば読み返してみたいと思います。


 

サロメーヤ・ネリス詩集『あさはやくに』について書きました

20世紀前半のリトアニアを代表する詩人、サロメーヤ・ネリスの第一詩集『あさはやくに』(木村文訳)の書評を、「ふらんす堂通信」166号に寄せました。

一読したとき、太陽や星、風、海、大地などの自然の現象を通して、「わたし」の感情や生命の在処を見つめる、まっすぐな眼差しの透明感に惹かれました。

自分を取り巻く世界に向かうときの詩人の純粋な感覚は、青春期と呼ばれる、限られた季節の熱さや繊細さを、読む人に思い起こさせるのではないでしょうか。

詩集には夢と現実をなめらかに結ぶ若々しい感性が生きた詩が並んでいますが、木村文さんの平明で柔らかな翻訳のおかげもあり、このみずみずしい世界の奥へとすっと入ってゆけます。

私も限られた文字数のなかで、この一冊の魅力がなるべく伝わるように…と思いながら書評を書きました。

◆木村文さんが訳された、サロメーヤ・ネリス『あさはやくに』のページは→こちら

また、書評が掲載されている「ふらんす堂通信」は下記のオンラインショップからお求めいただけます(166号の掲載はこれからのようですが)。

◆ふらんす堂オンラインショップ→こちら