2018年3月20日火曜日

暗闇の蝋燭として

第三詩集『あのとき冬の子どもたち』(七月堂)を刊行して一年が過ぎました。


この一年の間、多くのご感想や批評をちょうだいしたり、
「現代詩年鑑」のアンケートで書いていただいたりと。
ひとつひとつが忘れがたい大切な励ましとなり、
本当にありたがく、感謝しています。


そして、光栄なことに、さまざまな詩の賞の候補にも挙げていただきました。
それらの発表は終わっているので、ここに書かせていただくと・・・。


丸山薫賞、三好達治賞、高見順賞のそれぞれの候補に。
(現代詩花椿賞でも、選考委員の推薦詩集として挙げていただいたと七月堂さんから聞いています)


賞の候補として選んでいただいたこと自体もありがたいのですが、
何よりも、自分にとっては、詩作を始めたころからの憧れの詩人の方々に読んでいただけたことが、大きな励みになりました。


今日、選評の掲載誌が送られてきた、高見順賞に関しては、
学生のころから作品を愛読してきた堀江敏幸さんに、拙詩集について触れていただいた、ということが、とてもうれしい出来事でした。


堀江さんのエッセイや小説はもちろん、鮮やかな手仕事のような批評には、いつも魅了されています。
対象にじっくり、ゆっくりと息をひそめるように寄り添い、作品の輝きのもっとも澄む場所をとらえて、その光の頂から豊かな解釈の道程を描いてゆく。
作品への愛情に満ちた粘り強い接近の仕方や、独特な鋭さと繊細さが光る文章は、読書の真の快楽を開いてくれる魔法のようだな、といつも感じています。
そんなかたが自分の詩を読んでくださり、それについて書いてくださった。
そのことを、これからも何度も思い出したいと思います。


第48回高見順賞の堀江敏幸さんの選評から、拙詩集について書いてくださった部分を抜粋して、ここに記しておきます。詩作という未知の暗闇を進むための、いつまでも消えない蝋燭を、もうひとついただいたという気持ちで。
候補にご推薦くださった方々や、拙詩集をお読みいただいた方々に、心より感謝を申し上げます。
本当にありがとうございました。


いまは、毎日届けられるたくさんの詩集に向かうことを優先して、自分の詩作についても、少しずつ考えていきたいと思っています。
長めの散文詩にも挑戦したいし、これまでの書き方から離れてみたいな、など…。
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堀江敏幸さんの選評より。


「余白の扱いに散文の息をより強く感じさせたのが、峯澤典子さんの『あのとき冬の子どもたち』だった。清冽な言葉と息継ぎ。特別な匂い袋も、靴の底に忍ばせてある。いつでも取り出せるその匂いが、異郷への旅の記憶、過去の日々、父親らしき人の死、そして、下腹部につづいている鈍痛にさえ白い息として吹きかけられる。仄めかしを逃れて着実に重ねられていく言葉と言葉のあいだには、本当の意味での隙間がない。そこにあるのは稠密な余白だ……」